WEB埼玉
2005年3月7日(月)

地域で協力、命つなぐ
ムクロジの切り株移植 川口

 

 川口市東川口の綾瀬川の拡幅工事で切り倒されたムクロジの大木が、伐採を惜しんだ地域の人たちの協力で命をながらえ、切り株がこのほど、総合学習で木からいろんなことを学んだ児童らのいる同市藤兵新田の市立戸塚綾瀬小学校の校門脇に移植された。

ムクロジの切り株(中央)を移植する植木屋さんら=川口市立戸塚綾瀬小(幾島さん提供)

 ムクロジの木は綾瀬川に架かる佐藤橋のたもとにあった。樹齢約百年の大木で、周辺の自然のシンボル的存在だった。実は羽子板の羽根の玉として知られているほか、数珠の玉、水に浸すと泡が出て昔石けん代わりに使われた。

 伐採は二○○四年一月。ムクロジのある綾瀬川の風景が好きで、毎年実をもらいに来ていた同市安行の植木業横山隆さん(41)がたまたま伐採に出くわしたのがきっかけで、切り株を自宅の畑に預かることになった。

 「戸塚綾瀬小の児童と綾瀬川を愛する人たちがこの風景をつくってくれた。ムクロジを育った大地によみがえらせたい」との思いがあった。

 横山さんの畑でムクロジがいきづいていることを知った同小の図書ボランティアの主婦鈴木寿真子さん(44)=同市戸塚境町=は六年生の二女と紙芝居「ムクロジ物語」を制作。児童らに見せ、ムクロジ再生への夢を伝えるとともに、関係者に移植を働き掛けた。

 総合学習で戸塚綾瀬小の児童らとこのムクロジの木に親しんできた「綾瀬川を愛する会」代表の幾島淑美さんは「横山さんの願いは綾瀬川を愛する私たちの願いです。移植してムクロジを助けよう」と、昨年十二月から募金活動をした。

 戸塚綾瀬小に移植が決まったのは、横山さんの「戸塚綾瀬小の卒業記念樹にムクロジをもらってくれないか」という提案からだった。関係者の熱意と協力で同小の受け入れが決まった。

 先月二十七日、同小の学校評議員で植木業の人が地域の植木屋さん十二、十三人に声を掛けボランティアで移植を終えた。「ムクロジをふるさとに帰せて、子どもたちの元に植えてあげられてうれしい」と横山さん。

 同小の寶田治夫校長は「いろんなかたがたの善意と協力で命あるものを救ってくれたのが一番うれしい。今後の成長を見守りたい。子どもたちにはどうしてここに来たかを伝えていきたい」と話している。

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