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ニュース 2005年1月12日 更新

ムクロジ大木 再生へ/川口・綾瀬川土手


伐採後、市民の手で移植

 川口市東川口6丁目の綾瀬川の土手に茂っていたムクロジの大木が昨年初め、河川改修工事に伴って伐採された。しかし、ムクロジに愛着を持つ市民たちの活動で切り株が移植されて生き延び、今年2月ごろ、同市戸塚綾瀬小学校の校庭に再び移植されることになった。

 ムクロジは、実が羽根つきの追い羽根の玉になることで知られる。伐採された木は推定樹齢約100年。綾瀬川の佐藤橋のたもとにあった。川沿いの戸塚綾瀬小の児童は綾瀬川の植物や野鳥などを観察し、ムクロジにも親しんでいた。

 県中川・綾瀬川総合治水事務所が昨年春までに佐藤橋付近の川幅を広げ、佐藤橋も長さ59メートルに架け替えた。川の清掃や自然保護活動をしている「綾瀬川を愛する会」(幾島淑美代表)はムクロジの保存を望んだが、拡幅のため伐採された。

 昨年1月、川口市安行の植木業横山隆さん(41)がたまたま通りかかって伐採に気づいた。この木の実で追い羽根を作ったこともあり、何とか再生できないかと県と話し合った結果、2月に県が切り株を横山さんの畑に移植してくれた。

 大切に世話をしたところ、株から9本の枝が伸びた。できることなら綾瀬川沿いに戻してあげたい。この願いを知った同市戸塚境町の主婦鈴木須真子さん(44)が、次女で戸塚綾瀬小6年の直子さん(12)と一緒に、ムクロジの歩みや再生への夢をつづった紙芝居「ムクロジ物語」を制作した。

 同小で図書ボランティアをしている鈴木さんは児童に紙芝居を見せたり、校庭に植えられないか先生や知人に相談したりした。幾島さんも県や市に働きかけ、大勢の市民の活動もあって安住の地はムクロジの行く末を心配している子供たちがいる戸塚綾瀬小の校庭と決まった。

 綾瀬川を愛する会は移植費や管理費の募金活動もしている。植木業者らも移植に協力してくれそうだ。同小の寶田治夫校長は「子供たちはムクロジを巡る話から命の大切さを学ぶことができるでしょう」と話している。
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